院長ブログ

ゆっくり急げ~Fastina lente~

健康の大切さから考える社会保険料の話
2026.2.10

先日の衆議院選挙で「現役世代の社会保険料の負担を減らす」という主張を複数の党で目にするようになりました。働く世代の負担が増え続けている現状を考えると、この方向性自体には私も反対ではありませんし、真剣に向き合わなければならない課題だと思います。

「社会保険料が下がる」ということは、当然ながら社会保障の財源が減るということでもあります。さらに最近は「消費税減税」を掲げる声も増えており、社会保障を支える財源がさらに細っていく可能性もあります。そうなると、医療費の自己負担が増える、給付が抑えられる、受けられる医療の範囲が変わる…といった形で、巡り巡って私たち自身に影響が返ってきます。つまり「負担が減る」というのは、裏を返せば「病気になったときの負担が増える」ということでもあります。

健康なとき、人は健康の価値をつい忘れてしまいます。健康は、今私たちの周りにある酸素(空気)と同じように「いつでも当たり前のようにそこにあるもの」だと錯覚しやすいのですが、いざ病気になると状況は一変します。治療費、通院、薬、介護、仕事への影響…現実は急に重く負担になります。

医療の現場にいると、「もっと自分の体を大切にして欲しい」「もう少し生活習慣を整改善して欲しい」、そう思う場面が少なくありません。病気はある日突然やってくるようでいて、実は長い時間をかけて徐々に進んでいることも多いからです。

そして考えてみると、大切なのは自分の健康だけではありません。親の健康、子どもの健康、家族の健康。誰かが体調を崩しただけで、生活が大きく揺らぐこともあります。健康は「個人の問題」のようでいて、実は家族や社会全体を支える土台なのだと思います。

社会保険料を抑えるためには、制度の議論だけでなく、医療を提供する側と受ける側の意識改革も必要になります。私たち医療機関側は、無駄な検査や過剰な投薬を避けるといった医療の正しさとモラルが求められますし、一方で患者さん側も不要な受診や薬の内服、医療への不必要な依存を見直すことが必要なのかもしれません。

大切なのは、健康なうちから健康の価値を考え、それを維持できるよう努力をすること、生活習慣を整え、病気について知り、必要な医療は受けるが、不要な検査や薬は見直す、こうした医療側と患者さん側の小さな意識の積み重ねが医療費を抑え、結果的に社会保険料の負担軽減にもつながっていくはずです。

社会保険料を下げるという話は、単なる「負担軽減」ではなく、気軽に安価な医療を受けられる今のシステムを見直すことでもあります。だからこそ、私たちが自分自身の健康を大切にして、どのように医療を受けていくのか、どんな社会を残していくのかという話なのだ・・・と思います。

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