先日信濃毎日新聞に「診療所(クリニック)の医師が高齢になり、後継者不在で閉院となる診療所が増えているため、地元の銀行と県医師会が連携して後継者不足に対応する」といったの記事がありました。記事によると2022年の時点で診療所の医師の平均年齢が60.4歳で病院の勤務医の45.2歳よりかなり高齢であり、長野県内に約1600ある診療所のうち約4割が「後継者がいない」診療所だそうです。
私の同業者を見渡しても子供が医師になっていても親の診療所を継承しないケースも多く、そのような診療所を含めれば「後継者がいない」診療所の数は更に増えると思われます。
厚生労働省は「地域医療の充実と医療費の抑制」「高齢化社会での介護・福祉との包括ケアシステムの構築」などを実現するために、「かかりつけ医機能」を強引に進める構想です。現在でも地域医療の担い手として期待され、病診連携といわれるように急性期は病院で病状が安定したら診療所で治療を受けるように誘導されています。
しかし、そのかかりつけ医を担う診療所は高齢化しその数も減少していく傾向にあり、その傾向はとっくに地方では顕著です。私を含む診療所の医師の半分以上は会社員ならば定年で希望により雇用延長になり、そろそろ年金をいただけるライフステージの年齢です。
今後需要が見込まれるのに減少してきているならばビジネスチャンスでは?と思う方もいるでしょうが、なかなかそうもいきません。
高度化する最先端の医療に対して、病院では複数の医師がチームで診療していくことが通常ですが、開業医は1人で診察をして、1人で勉強して、1人で判断していかなくてはいけません(最近ではAIが診断を補助してくれる環境が整いつつありますが)。また診療に加えて経営も人事もしなくてはいけません。さらに近年の診療報酬改正による減収、物価や人件費の上昇など諸経費の増加も考えると、今後開業医を目指す若い医師が増えるとも思えません。
町のお医者さんがいなくなる・・・・この流れを止めるのは簡単なことだとは思えません。少なくとも私が現役で働いている間には対策もされないし解決もしないだろうと思われます。
定年を迎え激務から解放された同級生が、平日にゴルフウエアで受診してくれるのを迎えながら、さてこれから私はどうしたものか・・・・必要とされていることに感謝しつつも落ち着かない気持ちになります。
===甘利内科呼吸器科クリニック=呼吸器内科=長野市===