年末に糖尿病薬を肥満治療に流用する際の不適切な診療が話題になりました。その中にはほとんどお話(問診)もしないで薬を処方するオンライン診療も多くあるようで問題視されていました。肥満や美容系のオンライン診療は基本的に自由診療で、万が一事故や不具合が起きても自己責任の範囲が広いので、その善し悪しの判断は患者側に委ねられます。
コロナ渦以降、当院にも都内のオンライン診療専門の医療機関の受診歴や処方歴を持参して受診される方もみられるようになりました。当院の場合は「長引く咳」に対する診療記録もって受診されるケースが多いのですが、確認すると処方医が毎回違っていて「きっとアルバイトの医師がパートで仕事をしているな・・」「ここ大丈夫かな?」と感じるオンラインの医療機関もあります。
しかし一方で「ここなら私も受診して良いな・・」と興味を持っているオンライン診療もあります。高血圧専門の「高血圧イーメディカル」もそのひとつで、日本を代表するマーケッターの森岡猛さんが率いる頭脳集団?「刀」が企画するしているオンライン診療です。「高血圧イーメディカル」は、スマホのアプリで予約、待ち時間なしで「15分間」オンラインで医師と面談出来ます。自宅の血圧測定は自動的にアプリにグラフで記入され、不安や疑問点があればいつでも医師や看護師にチャットで相談できるそうです。
「高血圧イーメディカル」はオンライン診療の「長所である通院しない便利さ」に加えて、「弱点である安心感」をカバーしていると思われます。もちろん「いつでも」の安心感の裏では医療従事者の直接的な労働負担が必要になると思われますが、近い将来には進化したAIが対応をしてくれる時代になるでしょう。
オンライン診療はより広い範囲の患者さんに対して一定の質の診療を届けるのには向いていると思われます。高血圧のように状態を自分で測定して数字にして伝えられる病気に特化すれば、かなり有用性は高いと思われます。しかし、その一方で高血圧のオンライン診療中に「風邪の後に咳が続くのですが・・・」と相談しても、それは無理な相談で「内科を受診してください」となるでしょう。また「咳や痰」のように「正常と異常の区別が付きにくい症状」や「数字で測定したり表すことが難しい症状」には、オンラインで診察するのは難しいと考えます。
テクノロジーの進歩や医療環境の変化によって、今後も医療機関の選択肢が増えて行くと思われます。先に挙げた「刀」のようにマーケッティングに基づく参入や最新テクノロジーを駆使できるIT企業などの異業種からの参入も増えています。
そこで重要なのは「どのような症状や病気で、どの医療機関を受診するか?」・・・その選択は患者さんに委ねられるということです。そして我々医療機関も自分たちが「どのような病気や患者さん」に「どのような医療を提供していくのか」を勇気を持って示していくことが大切だと考えています。
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