院長ブログ

ゆっくり急げ~Fastina lente~

凡人の医者 63歳の誕生日を前に
2023.6.5

以前から今までの自分を振り返る機会があると、
はたして「自分は医者にむいているのだろうか?」と考えることがあります。
大谷翔平選手など世界の舞台で活躍するスポーツ選手や将棋の藤井聡太さんの活躍をみると、
この世に天才は確かにいると確信できます。
そして今までの経験や出会いから、医師にも各分野に天賦の資質を持った人がいることも確信しています。
 
私たちの世代は小さい頃から「努力に優る天才はなし」「頑張れば出来ないことはない」と教育されてきたように思います。
しかし、私がどんなに頑張っても100mを9秒台で走ることは不可能ですし、
大リーグはもちろんプロ野球選手にもなれなかったことは、これまでの人生を振り返れば明白です。
 
では私は医師としての才能があったのだろうか?
大学病院勤務の頃は与えられた研究課題に対して結果をだしたり、
診断や治療へアプローチにはセンスがあったように思いますが、才能と言えるレベルとは思えません。
また研究者として自ら課題を設定したり真実を探求する能力が特に優れていたとも思えません。
 
大学病院での研究を辞めて一般病院の勤務医や開業医として働く現場でも、
診断や治療の選択に科学者としての視点が必要です。
この点では医療の進歩にも助けられ及第点を付けられるレベルにいると思いますし、
呼吸器の診療の分野ではある程度のご評価をいただいているとも自負しています。
しかし、例えば黒澤明監督の映画の主人公「赤ひげ」先生のように
人間性が優れ自己犠牲の精神に満ちているか?と問われると、
甘めの自己採点をしても及第点を出すことが出来ません。
 
では医師はみんな「赤ひげ」先生でなければいけないのか?
「赤ひげ」先生以外の医師はダメなのでしょうか?
医師に限らず、この世界のみんなが様々な期待を背負い、
その期待に応えられる人達だけに居場所が与えられるものでしょうか?
 
確かに私も日々成長を目指して、他を犠牲にしながら
期待や要望に追われるように生活してきた時期がありました。
今振り返ると、それは自分の人生を生きていたというより、
他者の期待通りの自分であるために頑張っていたように思えるのです。
 
そして今・・・
これから先の人生を思うとき
自分の人生の主役を取り戻すために何をすれば良いのか。
この年齢になって、簡単ではない問いを残してしまったことに気付かされています。
 
==甘利内科呼吸器科クリニック==長野市==呼吸器内科==アレルギー科==

一覧へ戻る