院長ブログ

ゆっくり急げ~Fastina lente~

街からインフルエンザが消えた? コロナ禍から学ぶ新しい生活様式と健康
2021.3.1

新型コロナウイルス感染症が流行した当初、呼吸器系の持病を持つ人が重症化しやすいこともあり、喘息が悪化する患者さんが増えるのでは?と心配されていました。ところが、実際にはその反対で、日本ではコロナ禍の1年に喘息入院患者数が例年よりも大きく減少していたことがわかりました。先日そのデータが世界的な医学雑誌(The Journal of Allergy and Clinical Immunology)に掲載されましたが、2017年から2019年に比べると、コロナ禍の1年間は小児喘息も成人喘息も症状が悪化して入院する人が半分以下に減っていました。
 
この結果は、3密を避ける、外出時のマスク装着などが、通常の風邪やインフルエンザを防ぎ、花粉などのアレルゲンおよび煙草の煙、大気汚染物質などの喘息が悪化する因子を減らしたと考えられます。また、個人の健康への意識も高くなり、禁煙や体調管理など日常の予防行動を積極的に行ったことも良かったのでしょう。さらに、地域レベルの予防策(学校閉鎖、大規模な集会の中止、在宅勤務の促進)や、経済的閉鎖に関連した不用な接触の減少も奏功した面があると思われます。
個人や社会が生活様式を変えることにより喘息などの呼吸器の病気以外にも、花粉症やインフルエンザなど多くの病気が予防や軽減できることは、日々診療を行う私達も実感しています。1年前の新型コロナウイルス感染症の流行当初は通院が必要な患者さんが受診を控える、いわゆる受診抑制で受診患者さんが減少していると考えられていましたが、今期インフルエンザの流行が見られなかったことからも明らかに、体調を崩すして受診する患者さんが減っています。
 
コロナ禍は健康を維持するために、予防行動や生活環境への配慮が重要であることを教えてくれました。体調を崩す人が減ることは、増加する一方の社会保障費(医療費)を削減できる可能性もあります。
私たちは、コロナ禍で多くの犠牲と我慢を強いられましたが、コロナ禍から学ぶことも出来ます。健康のために、「具合が悪くなったら医者に行く」から「病気にならない、悪化させない」、新しい日常生活を目指すことが大切だと思います。
 
==甘利内科呼吸器科クリニック==呼吸器内科==アレルギー科==長野市==

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