院長ブログ

ゆっくり急げ~Fastina lente~

還暦からのパラダイムシフト
2021.1.5

今年、1961年生まれの私は60歳で還暦を迎えることになりました。

平均寿命が驚異的に延びた現代では、

還暦を迎えることは昔ほど大きな意味は無いかも知れませんが、

少し前なら定年を迎える60歳は

人生の節目を迎える年齢であることは確かでしょう。

 

思い返すと、今からちょうど30年前、

30歳は私が医師としてキャリアの方向性を決めた年齢でした。

当時は医師になって4年目、

内科医には多くの症例を経験することが大切と考えていた私は、

稀な難しい症例に時間をかけて診療したり、基礎研究をするという

大学病院の仕事が自分に合っているのか疑問を持っていました。

しかし、当時1年の予定で派遣されていた地域の病院で

上司の先生の診療に触れて考え方を変えました。

その先生の冷静かつ理論的な診療に

「内科は自然科学で、一般診療においても、根拠のない経験に頼るよりは、

科学的・論理的に進めるべきだ」と気づかされました。

そして、科学的な思考に欠けていると実感した私は、

大学病院に戻る進路を選びました。

 

その後、大学病院、篠ノ井総合病院を経て開業しましたが、

それぞれの場所で、医師としてより良く機能するために、

自分なりに頑張ってきたと思っています。

 

あれから30年・・・・・

忙しい外来と医学の進歩のスピードに限界を感じてきた昨年、

新型コロナウイルス感染の流行が起きました。

経験したことがない事態に、心配や不安がありましたが、

逆に受診患者さんの減少によって生まれた時間的な余裕は、

医師としての「今まで」と「これから」をゆっくり考える時間を与えてくれました。

 

30年間医師としての機能的な価値を高める努力し、

開業してからはクリニックが医療機関として、

より良く機能することを目指してきました。

 

しかし、考えてみると

自分が目指してきた医師としての機能的な価値は、

もし私がいなくなっても、誰かがその機能を引き継ぐことが出来る価値です。

一方で、医師としての機能的な価値とは別に、

人として存在することが大切で、私自身が存在する意味を高めることが

これからの私にとって大切だと考えるようになりました。

 

同様に、当院の医療機関としての機能は、

もし当院が閉院しても、他の医療機関が引き継ぐことが出来ます。

一方で、当院が機能的な価値と共に

他院には代えられない存在価値を持つことが

大切なのだと考えるようになりました。

 

多様性の時代になり、様々な生き方を認め合うようになりました。

医師も色々な生き方があって良いでしょうし、

医療機関もまた色々な方向性があっていいと思います。

今まで順調に成長できた幸運を感じながら、

私個人は「スキルアップよりもセンスアップ」、

クリニックは「機能価値から存在価値へ」

生き方や価値観を変えていく時期が来ていると感じています。

 

==甘利内科呼吸器科クリニック==長野市==呼吸器内科==アレルギー科==

 

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