院長ブログ

ゆっくり急げ~Fastina lente~

百の姓を持つ
2020.1.5

「この時期は確定申告の時期だし、
今年は農地の名義変更の手続きで大忙しだよ」
これは、年末受診された農業の患者さんに、
「寒くなって労働は減ってくる時期だね」と
問いかけた時のお返事です。
この患者さんのお返事が印象的で、
年末年始のお休みにゆっくり考えてみました。
 
農業のその患者さんは、
当然、野菜も米も果樹も育てることができます。
農業用の機械の知識や扱い方も知っていますし、
簡単な修理は自分でこなします。
その上、確定申告も自分でするし、
土地の名義変更まで自分でやります。
人手が必要になった時は助け合い、
機械が必要な時は仲間同士で貸し借りしているそうです。
今年は、昨年の台風19号の被害を受けた農地を
仲間たちで引き受ける計画もあるそうです。
 
それに比較して自分はどうか?
 
医療機械の知識はある程度ありますが、
トラブルは医療機械会社のサポートに頼ります。
会計のことは窓口の事務や家内に任せっぱなしで、
ほとんど分かっていません。
税務関係は会計事務所に任せっぱなしで、
公の書類や手続きは司法書士さん、
労務管理は社会労務士さんにお任せです。
アウトソーシング(外部委託)といえばカッコはつきますし、
日々の診察で手一杯なのも事実です。
しかし、そう思う一方で、
自分にとって不都合な事実にも気がつきました。
つまり私は「医者しか出来ない・・・」のです。
周囲の方からは「先生」と呼ばれていますが、
もし医師をやめれば、さほど社会の役にもたたない、
かなりスケールの小さい人間かもしれないのです。
 
農家の方たちを、百姓と呼ぶことがあります。
「お百姓さん」と感謝と親しみを込めて呼ぶこともありますが、
一方では「百姓」と呼ぶと、卑下するような、
軽んじるようなイメージがあります。
もともとの語源は百の姓と言うように、
昔は誰もが農作物を生産していたという意味だそうです。
医者も僧侶も髪結いも大工も鍛冶屋も商人も
1人で多くの職業を兼任しながら、
農業もやっていたそうです。
つまり、以前はみんなが百姓で、
農業以外にもそれぞれ自分の得意な仕事を持って
社会の中で生活していたということだそうです。
 
現代では、
得意分野にい特化したスペシャリストや
資格を持った人たちが重宝されます。
しかし、最近のビジネス本や教養本には、
「百姓的な生き方」について書かれた
本や記事も目につくようになっています。
 
若い人たちが、
スペシャリストを目指したり、
弁護士、会計士、医師、教師などの
士業(師業)を目指し資格試験に挑戦したりするのも
とても良いことだと思います。
 
でも、
自分で出来ることは自分でやる、
多種多様な技術や知識を持つ、
困ったときは仲間で協力して助け合う、
そんな、百姓的な生き方も、
清々しく思えます。
 
==甘利内科呼吸器科クリニック==呼吸器内科==アレルギー科==長野市==
 

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