院長ブログ

ゆっくり急げ~Fastina lente~

つらいと言っても良い・・・・
2019.6.11

先日の診察の時の話です。

糖尿病で通院している患者さん(Aさん)が受診されました。

いつもは1ヶ月に1回受診されていましたが、

今回は2ヶ月ぶりの受診でした。

そして、糖尿病の状態も悪化していました。

思わず「どうしたの?」と聞いた私に、

「仕事が忙しくて・・・」と答え

少し間をあけてから

「ストレスが・・・」と言いかけて、

「あっ、でもみんなストレスありますものね」

「私だけじゃないですよね・・・」と付け加えたのです。

 

以前、

私も「ストレスが・・・」とおっしゃる患者さんに

「でも、ストレスのない人なんかいないよ」

「ストレスを言い訳にしたら駄目だよ」

「体調が悪化したら、もっとストレスが増えるよ」

そんなふうに話していたと思います。

しかし、Aさんの話を聞いたときに

ふと・・・・

「ストレスって言い訳なのか?」と考えたのです。

 

医療現場にいると、過労死はよく耳にする話です。

「電通の事件」のように大きなニュースにはならないだけで、

時々耳にするような事件です。

過労死までいかなくても、精神疾患に罹患したり、

疲れて転職してしまう医療従事者も多くいます。

しかし、医療現場の過重労働が改善されないのは、

「俺たちは3日寝ないで働いた」

「家に帰るのは週1回ぐらいだった・・・」

昔そんな働き方をした医師が管理者にいるからでしょうか?

「お医者さんが働いてもらわなきゃ困る」

「いつでも自分の主治医に診察して欲しい」という

社会の意識のためでしょうか?

いずれにしても、

小さい頃から社会のエリートとして

期待されて歩いてきた多くの医師たちが、

「つらいです」「限界です」と

簡単に言えない状況にあるのでは?と思うのです。

 

私は医療現場しか知りませんが、

他の職場でも同じように

「辛いといえない状況」が多くあるのだろうと思います。

 

「みんなが、そんなことを言っていたら仕事が回らない」

「頑張っている人がいるのに、それは甘えだ」

そのような意見にも一理あると思います。

サボタージュとしか思えない行動をとる人がいるのも事実です。

しかし、

時代がどんどん変わっている今

「俺たちはそうしてきたのだから、君たちもそうすべき」

「ストレスのせいにするのは甘えだ」という考えは違うと思うのです。

 

ストレスは人を蝕みます。健康を壊します。

そのストレスは、人それぞれで違います。

「みんながストレスに立ち向かわなくてはいけない。」

「ストレスを克服しなくてはいけない」それは幻想です。

ですから、

「ストレスでつらいです・・・」と言っても良いと思うのです。

 

「甘えだ」という人もあるでしょう、

「もっと自分に厳しくなきゃ駄目だ」

今まで、私自身も

自分をそう叱咤激励していました。

 

しかし、

自分自身のことを分かってあげられるのは、

自分自身だけなのだから、

「ストレスで辛い・・・」

「疲れてしまった・・・」

そう口にしてみても良いのでは・・・・ と思うのです。

そして、

そのような人全員に同情することは出来なくても、

手を差し伸べることは出来なくても、

理解をしてあげることは出来る。

最近ではそう思っています。

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