『喘息と診断された患者さんの33%は喘息ではなかった』
昨年のアメリカ呼吸器疾患学会で発表され、私が気になっていたデーターが、
早速今年の1月にJAMAという著名な医学雑誌に掲載されました。
医師に喘息として治療を受けた613名を1年間慎重に経過観察をした結果
203名(33%)が喘息ではなかったとのことです。
カナダで行われたこの研究は、15ヶ月間と短めで、
喘息ではないと診断された患者さんが、たまたま「喘息の寛解期」だった可能性もあり、
将来にわたって喘息ではないのか?疑問なところもあります。
しかし、医療先進国のカナダで出されたこのデーターは無視できず、
喘息の診断の難しさを表しています。
カナダのデーターでは、検査が行われたのは49%で、
半数の患者さんが症状と診察所見で診断されていました。
喘息や咳喘息の診断において、その症状の経過や診察所見が重要なのは当然です。
しかし、それだけに頼ると、どんなに熟練した医師でも間違うことがあり、
実際には喘息を否定された33%の患者さんの多くは検査を受けていなかったそうです。
喘息の検査としては、肺機能検査、呼吸NO検査、気道過敏性試験が重要になります。
そのうち発作を誘発する可能性のある気道過敏性試験は、
長野県内で行える施設は信州大学病院と長野赤十字病院の2箇所しかありません。
当院では肺機能検査、呼気NO検査を行うことができます。
肺機能検査は通常の肺機能検査に加えて、
Most-Graph という特殊な肺機能検査も行っています。
当院では気道過敏性試験は行えません。
しかし、今年のアレルギー学会誌に
「呼気NO値とMost Graphを行うことで、気道過敏性試験の結果を予測できる」といった論文も発表されており、
呼気NO検査とMost Graphを組み合わせることで
気道過敏性を推測することは、ある程度可能と考えております。
喘息は症状の変化や個人差も大きく、私もいつも診断に悩んでいます。
「この人は本当に喘息なのか?」お付き合いの長い患者さんでも、
時々過去のカルテを見ながら確認しています。
喘息の顔をした別の病気があります。
他の病気の顔をした喘息があります。
騙されないように、見逃さないように
自分の先入観や思い込みを捨てて
慎重に柔軟に診察をしていきたいと思います。
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